所得税の基礎知識
I.所得税の確定申告とは
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得の金額とそれに対する所得税の額を計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告書を提出します。
II.所得税のしくみ
所得が1種類のみで納める税金が発生する場合の計算の流れは、次の通りです。
(1)「収入金額」-「収入から差し引かれる金額」=(1)「所得金額」
(2)(1)「所得金額」-「所得から差し引かれる金額」=(2)「課税される所得金額」
(3)(2)「課税される所得金額」×税率=(3)「所得税額」
(4)(3)「所得税額」-「税金から差し引かれる金額」=(4)「申告納税額」
III.所得の種類
所得は、その発生形態などに応じて10種類に分類されます。
事業所得 …商・工業や漁業、農業、自由業などの自営業から生ずる所得
不動産所得 …土地や建物などの貸付けから生ずる所得
利子所得 …公社債や預貯金の利子などの所得
配当所得 …法人から受ける配当などの所得
※配当所得には確定申告不要制度があります
給与所得 …給料、賞与などの所得
雑所得 …公的年金等 国民年金、厚生年金などの所得
…その他 原稿料や講演料、生命保険の年金など他の所得に当てはまらない所得
譲渡所得 …機械やゴルフ会員権等を譲渡したことによる所得
土地や建物、株式等を譲渡したことによる所得
一時所得 …生命保険の一時金、賞金や懸賞当せん金などの所得
山林所得 …山林を伐採して譲渡したことなどによる所得
退職所得 …退職金、老齢給付金などの所得
IV.所得から差し引かれる金額(所得控除)
雑損控除 …災害や盗難により住宅や家財などに損害を受けた
医療費控除 …一定額以上の医療費の支払がある
社会保険料療費控除 …国民健康保険料や国民年金保険料、介護保険料などの支払がある
小規模企業共済等掛金控除 …小規模企業共済法の共済契約に係る掛金等の支払がある
生命保険料控除 …生命保険料や個人年金保険料の支払がある
損害保険料控除 …火災保険料や傷害保険料の支払がある
寄付金控除 …国、地方公共団体などに支出した寄付金や特定の政治献金などがある
寡婦・寡夫控除 …あなたが寡婦又は寡夫である
勤労学生控除 …あなたが勤労学生である
障害者控除 …あなたや控除対象配偶者、扶養親族が障害者である
配偶者控除 …控除対象配偶者がいる
配偶者特別控除 …あなたの合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が38万円を超え、76万円未満である
扶養控除 …扶養親族がいる
基礎控除 …38万円の控除
V.税金から差し引かれる金額(主なもの)
配当控除 …配当所得がある
住宅借入金等特別控除 …家屋を住宅借入金等で新築、購入又は増改築等をした
政党等寄付金特別控除 …特定の政治献金のうち政党や政治資金団体に対するものがある
住宅耐震改修特別控除 …家屋の耐震改修をした
泉徴収税額職 …給与や年金などの支払を受ける際に源泉徴収された所得税額がある
VI.確定申告が必要な方
(次のいずれかに当てはまる方は、所得税の確定申告が必要です。)
(1)給与所得がある方
(大部分の方は、年末調整により所得税が精算されるため、申告は不要です。)
次の計算において残額があり、さらに(1)から(4)のいずれかに該当する
各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む)から、所得控除を差引いて、課税される所得金額を求めます。
↓
課税される所得金額に税率を乗じて、所得税額を求めます。
↓
所得税額から、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額を差し引きます。
(1)給与の収入金額が2,000万円を超える。
(2)給与を1ヶ所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える。
(3)給与を2ヶ所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える。
※給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄付金控除及び基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告不要です。
(4)その他一定の場合
(2)公的年金等に係る雑所得のみの方
次の計算において残額がある
公的年金等に係る雑所得の金額から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。
↓
課税される所得金額に税率を乗じて、所得税額を求めます。
(3)退職所得がある方
外国企業から受取った退職金など、源泉徴収されないものがある
※退職所得については、一般的に、退職金の支払の際に支払者が所得税を徴収する源泉徴収だけで所得税の課税は済まされます。なお、退職所得以外の所得がある方は、(1)又は(4)を参照してください。
(4) (1)〜(3)以外の方
次の計算において残額がある
各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む)から、
所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。
↓
課税される所得金額に税率を乗じて、所得税額を求めます。
↓
所得税額から、配当控除額を差し引きます。
VII.確定申告をすれば税金が戻る方
次のいずれかに当てはまる方などで、源泉徴収された税金や予定納税をした税金が納め過ぎになっている方は、還付を受けるための申告(還付申告)により税金が還付されます。
なお、給与所得者で確定申告の必要がない方が還付申告をする場合は、各種の所得(退職所得を除く)についても申告が必要です。
(1)総合課税の配当所得や原稿料などがある方
年間の所得が一定額以下である場合
※一定額は、あなたの所得金額や源泉徴収された税金などにより異なります。
(2)給与所得者
雑損控除や医療費控、寄付金控除、住宅借入金等特別控除(年末調整で控除を受けている場合を除く)、政党等寄付金特別控除、住宅耐震改修特別控除などを受けられる場合
(3)所得が公的年金等に係る雑所得のみの方
医療費控除や社会保険料控除などを受けられる場合
(4)年の中途で退職した後就職しなかった方
給与所得について年末調整を受けていない場合
(5)退職所得がある方
退職所得の支払を受けるときに「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったため、20%の税率で源泉徴収がされ、その源泉徴収税額が正規の税額を超えている場合
◎退職所得は次の式で計算します。
(収入金額-退職所得控除額)×0.5
◎退職所得控除額は、つぎのとおりです。
●勤続年数が20年までの場合
40万円×勤続年数
(80万円より少ないときは80万円)
●勤続年数が20年を超える場合
70万円×勤続年数-600万円
※障害者となったことにより退職した場合は、上記で計算した金額に100万円を加算します。
(6)予定納税をしている方
確定申告の必要がない場合
確定申告に使う書類についての説明
主な申告書は「申告書A」「申告書B」「分離用」です。
確定申告を行う際には、まず記入用紙についての知識が必要です。たとえば、確定申告書にA様式とB様式があり、主にA様式が個人用、B様式が個人事業者用であるというような事です。
A様式の申告書は元々、所得の種類でいうと給与所得や雑所得、配当所得、一時所得にあてはまるものだけに限定されるので2箇所以上から給与をもらったり、医療費控除を受けようとしているサラリーマン向けです。一方、フリーランスや自営業の人たちが使用する申告書は事業所得を記載できるB様式
が基本となり、それ以外の特殊事情(譲渡所得がある、赤字が計上されているなど)によって、「分離
課税用の申告書」「損失申告用の申告書」と組み合わせれることになります。
使用する申告書 | 申告の内容 |
A | 申告する所得の給与所得や雑所得、配当所得、一時所得だけの人で、予定納税額のない人が使用できる。 |
B | 所得の種類にかかわらず、誰でも使用できる。 |
Bと分離用 | 土地建物等の譲渡所得がある人 |
申告分離課税の株式などの譲渡所得などがある人 | |
申告分離課税の先物取引の雑所得がある人 | |
山林所得や退職所得がある人 | |
Bと損失用 | その年の所得金額が赤字の人 |
雑損控除額をその年の所得金額から控除すると赤字になる人 | |
繰越損失額をその年の所得金額から控除すると赤字になる人 |